■はじめに:Windows 11 25H2で再発した「電源・プロセス」系の深刻な不具合
Windows 11 の大型展開である「25H2」では、数多くの不具合が報告されている。前回は「更新してシャットダウンを選んでも再起動してしまう問題」が大きな話題となったが、ここにきて新たに深刻なバグが確認された。それが 「Task Manager(タスクマネージャー)が閉じられない」「プロセスが増殖してCPU/RAMを大量に消費する」 という問題である。この不具合は 2025年10月後半に配信されたオプション更新(特に KB5067036)を適用した環境で多数発生し、Microsoft も公式に「既知の問題」として認めている。特にゲーミングPCやワークステーションなど、高負荷環境で長時間運用するユーザーから悲鳴が相次ぎ、SNSや技術系フォーラムでは短期間で大きな炎上となった。
この問題は単に「タスクマネージャーが閉じない」という軽微な現象ではない。裏側では taskmgr.exe がバックグラウンドで残留し続け、起動のたびに“複製”が生成されてしまい、知らぬ間に50個以上のプロセスが積み重なってしまうケースさえ報告されている。 この増殖したプロセス群はCPU使用率を押し上げ、メモリの空き容量を奪い、ゲームのフレームレート低下、動画エンコード失敗、アプリケーションの強制終了など、PC全体のパフォーマンス悪化を引き起こす。特に、24時間連続稼働している配信者のPCや、業務サーバー的に利用されているワークステーションでは、徐々にリソースが圧迫されていくため、数日後に極端な重さとして現れる危険もある。
本記事では、この “Task Manager 増殖バグ” がなぜ起きたのか、どの更新が影響しているのか、どのような挙動をするのか、そしてなぜゲーマー・クリエイターを中心に被害が拡大したのかを、わかりやすく・深く掘り下げていく。
■ Task Manager閉じられない問題とは何か:表面上は正常・裏側でプロセスが死なない
問題の発端は、タスクマネージャーを起動して「× ボタン」で閉じただけでは、本来終了するべき taskmgr.exe が Kill(終了)処理されず、裏側で生き残ってしまう というものだ。ユーザーが気付かないまま、タスクマネージャーを開いては閉じ、開いては閉じ……と繰り返すたびに“隠れインスタンス”が累積していく。そして、あるタイミングを境に、CPUファンが突然高速回転し始めたり、ゲーム中にフレームレートがガタ落ちするなど、異常に気づいてタスクマネージャーを開くと、プロセス欄に taskmgr.exe が 30 個、50 個、なかには 100 個近く並んでいたという報告さえある。
この「隠れプロセス蓄積」こそが今回のバグの核心だ。通常、タスクマネージャーは自身のプロセスを適切に終了させる仕組みを持っているが、Windows 11 25H2/24H2 の特定の更新後、“ウィンドウを閉じる操作” がプロセス終了に紐づかない状態が発生。結果としてウィンドウだけ閉じ、実体は死なず、ゾンビ化したプロセスが増え続けるという挙動をしてしまう。特にオーバーレイ表示やGPU切り替え機能を利用しているPC環境で影響が顕著で、NVIDIA や AMD のユーザーが多く報告しているのも特徴だ。
■ 技術的背景:10月28日付 KB5067036(26200.7019)適用後に増加
Microsoft の公式ドキュメントでは、2025年10月28日に配信された KB5067036(Build 26200.7019 / 26100.7019) をインストールした後、「Task Managerが閉じられない」「multiple lingering instances(残留インスタンスが増殖する)」という問題が発生すると明記されている。
Windows 11 version 25H2
Windows 11 version 24H2
これらの両方に影響が及んでいることから、25H2固有の不具合というより、Windowsコア側の問題である可能性が高い と指摘されている。特に Task Manager UI まわりのコードは 24H2 以降で大きく改良されており、UI 刷新や GPU 表示周り、バックエンドのスレッド管理に影響が出ている可能性がある。
技術系フィードバックによると、ウィンドウを閉じる際に呼ばれる “WM_CLOSE” イベントと、実際にプロセスを終了させる “TerminateProcess” 相当のコードが誤って同期しなくなるケースがあり、特にウィンドウ移動・マルチモニター環境で負荷が高いと発生しやすいとの報告もある。これは Desktop Window Manager(DWM)まわり、または 24H2/25H2 の内部再設計に起因している可能性が高い。
■ ゲームPC・クリエイターPCで被害が大きかった理由
この不具合は一般ユーザーよりも、高性能PC・クリエイターPC・ゲームPC で特に目立った。理由は主に三つある。
- タスクマネージャーを頻繁に開閉するユーザー層が多いから
ゲームのフレームレートが落ちたとき、CPU温度を確認したいとき、配信中にリソースをチェックするなど、ゲームユーザーはタスクマネージャーを頻繁に開閉する。その結果、背後で残る“隠れインスタンス”が一気に増える。 - 高リフレッシュレート環境はUI操作を頻繁に行う
240Hz、360Hzモニター環境では、動作負荷が増えた瞬間の違和感を即座に感じやすい。そのためタスクマネージャーを開く頻度が増え、結果としてプロセス増殖が加速する。 - 長時間起動前提のPCは影響が蓄積しやすい
配信PCや動画編集用PCは長時間電源を落とさない。タスクマネージャーの残留プロセスが溜まっていってもユーザーが気付きにくい。気付いたときには CPU 使用率が高止まりし、ゲーム中に“カクつき”が発生する。
Tom Warren 氏(The Verge)の X(旧Twitter)投稿が拡散され、このバグの存在が一気に世界中のゲーマーに知れ渡ったのも、この不具合が短期間で社会現象化した理由のひとつといえる。
■ Microsoft の対応:既知の問題として認識し、11月更新で修正
Microsoft はこの不具合を公式に認め、11月の累積更新にて修正が行われた。サポート文書には次のように記載されている。
「Closing Task Manager using the Close (X) button does not fully terminate the process, which can leave multiple instances running and degrade system performance.」
つまり今回の問題は、Microsoft も明確に認識した“重大バグ”であり、11月以降の更新を適用していれば多くの環境で改善されている。ただし、企業向け環境など更新が遅めのユーザーは、今でもこのバグの影響を受ける可能性があるため、最新ビルドへの更新が強く推奨される。
■ ビジネス現場での影響:解析ツール・モニタリング環境で深刻化
ゲームPCだけでなく、企業の IT 部署や監視ツール運用者でも問題が報告された。タスクマネージャーは IT サポート・運用担当者にとって重要な診断ツールであり、動作確認やログ監視中に頻繁に起動される。そのため、残留プロセスが蓄積し、いずれは監視端末のレスポンス低下・解析ツールの停止など、業務への影響を引き起こすこともある。
特に仮想環境を利用する企業や Azure AD 管理環境では、CPU 使用率の急上昇が別のアラートを引き起こし、セキュリティチームを混乱させるという二次被害も確認された。
■ BitLocker 回復キー要求の誤作動:25H2で同時に起きた別の不具合
Task Manager 問題と並行して、25H2環境で BitLocker の回復キー入力を突然要求される という異常動作も報告されている。これは Windows Update 直後や再起動後に、通常では求められない回復キー画面に飛ばされるというものだ。
多くの場合は TPM 周辺の状態遷移が関係しており、更新直後にセキュアブートの一部状態が変化したり、ハードウェア構成が変わったと誤認された結果、BitLocker が「不正アクセス」と判断してしまうケースがある。特にノートPCや Surface シリーズで多く報告されており、企業ユーザーにとっては非常に厄介な不具合のひとつだ。
Microsoft はこの問題も既知の課題として認識しており、今後の更新で安定性向上が行われるとされている。
■ まとめ:Task Manager バグは25H2を象徴する“静かに深刻な問題”だった
Windows 11 25H2 は、Enablement Update 方式による“高速アップデート”である反面、内部には未整理のコードや複雑な状態遷移が多く残されている。その結果、今回のように「表面上は軽微だが、裏側で深刻な影響が蓄積する」タイプの不具合が発生しやすい。
Task Manager の増殖バグは、その典型例といえる。見た目はただの UI の誤動作にみえるが、
- 背後でプロセスが残留する
- 長時間でリソースを奪い続ける
- パフォーマンス低下の原因がわかりにくい
という3つの要素が合わさり、ユーザーに大きな影響を与えた。
幸い、本件は 11 月更新で修正されつつあるが、25H2 の利用者は今後もしばらくは Windows Update 情報を注意深く観察し、電源・プロセス管理周りの動作をよく確認する必要があるだろう。
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Q & A
Q1. Task Manager が閉じてもプロセスが残るのはなぜ?
A. 2025年10月28日以降の更新(KB5067036)で、ウィンドウを閉じる操作とプロセス終了処理の連携に不具合が生じ、taskmgr.exe がバックグラウンドで生き残る状態が発生したためです。
Q2. このバグを確認する方法はありますか?
A. タスクマネージャーを起動し、プロセス一覧で taskmgr.exe が複数存在していないか を確認します。多い場合は今回のバグの影響を受けている可能性が高いです。
Q3. どのビルドで修正されましたか?
A. Microsoft は11月の累積更新で修正を行い、Build 26200.7019 以降(25H2/24H2共通)で改善されたと発表しています。
Q4. ゲーミングPCで症状が目立つのはなぜ?
A. FPS低下や遅延を確認するためにタスクマネージャーを頻繁に開閉するユーザーが多く、結果として“隠れインスタンス”が大量に蓄積しやすいからです。
Q5. 暫定対策はありますか?
A. 「×」ではなく
プロセス → taskmgr.exe → タスクの終了
を使って明示的に終了させる方法が推奨されています。また、最新の累積更新を適用することで大半の環境で改善します。
Q6. BitLocker 回復キーが突然要求される問題と関係ありますか?
A. 直接の関係はありませんが、同じ 25H2 更新周りで発生した別の不具合です。更新直後の TPM 状態変化を誤認し、BitLocker が「不正変更」と判断して回復キー画面を表示するケースが報告されています。
Q7. 今後も同様の不具合が起きる可能性はありますか?
A. 25H2 は Enablement Update による構造のため、内部処理のズレが原因で細かい不具合が出やすい傾向にあります。Microsoft は継続して安定化を進めていますが、しばらくは更新内容のチェックが重要です。



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